慌ただしく迎えた出発の日と見送る人たち

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留学の出発日が決まってから出発まで、保険の手続きをした以外は何をしたのか全く記憶がない。
それはたぶん、留学中にあった出来事が壮絶すぎて、何もない平和な数日間がかき消されてしまったのだと思う。

我が家にホームステイ中のNちゃんは留学エージェントの夏休み研修で不在だったため、空港へは娘と母と私の3人で向かった。

ずっしりと重いスーツケースは、直前まで体重計で重さを確認しながら、航空会社の定めた預けられる荷物の最大重量ぎりぎりに収めた。

空港でエージェントの担当者と落ち合い、チケットを受け取って搭乗手続きをしている間に、バレエのお友だちが2人と、既に夏休みが終わっている学校もあったため来れなかったお友だちのお母さんと妹さん、そして私の元同僚が会社を抜け出して見送りに来てくれていた。

私はもう娘と話すこともなく、みんなで並んでバレエのポーズで写真を撮ったりするのをボーっと眺めていた。

生まれてからずっと、一緒にいるのが当たり前だった娘が、その日から10カ月もの長い間、いなくなってしまうなんてピンとこなかった。

それよりも、無事に現地に到着できるのかが不安だった。

福岡12:20発(日本のパスポートで出国)→台北13:40
台北19:40発→サンフランシスコ16:30着(アメリカのパスポートで入国)
サンフランシスコ19:00発→現地21:37

エージェントからもらったタイムテーブルを見たときは全行程で9時間余り…かと一瞬思ったが、現地時間で表記されているため、実際にかかる時間はほぼ丸一日。

サンフランシスコでは、預けていた荷物を引き取り、国内線の搭乗手続きをして再び荷物を預けなければならず、広いサンフランシスコ空港でそれが娘にできるのか…とにかくそれだけが心配だった。

そして、出発ゲートに向かう時間。

一人ひとりとハグをして、最後に私の順番になったとき、なんとも言えない感情が込み上げてきて、娘を抱きしめながら口もとがブルブルっと震えた。

あっという間に出発ゲートに吸い込まれていく娘を見ながら、あまりのあっけなさに、ただの旅行の見送りに来ているような、1週間後ぐらいにひょっこり「ただいま~!」と帰ってくるんじゃないかとそんな気がして、喪失感はあまりなかった。

そしてこのとき、もう一人、出発ゲートへ消えていく娘を見送りに来ている人がいた。

娘に話かけることも、近づくことさえもなく、ひっそりとどこからか娘を見ていたのは、娘の父親だった。

いつもありがとうございます。
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