キケンなアメリカ初上陸 その2

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もうダメかと思った。でも必死に叫んだ。
いや、叫んだと言うより、めちゃくちゃに文句を言った。
とにかく相手との距離が縮まるにつれて声が大きくなり、もう私自身が破裂しそうなくらいの大きな声と怯えた顔だったと思う。
そして諦めた。
私ではなく、相手が諦めてくれた。
彼は私に詫びると、駐車場に戻り、何事もなかったかのように車でホテルまで送ってくれた。
私は完全に世間知らずの怖いもの知らずだった。

今こうして平和に暮らしていられるのは、ただ運が良かっただけだと思う。
話は前後するが、アメリカに着いたその日、ホテル近辺を徒歩でウロウロした。
たまたま通りがかった大きなホテルに入ってみる。
広いロビーの奥まで行ってみると、公衆電話がズラリと並んでいた。
小銭は持っていない。電話のかけ方もわからない。
仕方ないのでオペレーターを介してコレクトコールで母へ電話をした。
辞書を送ってもらうために。

電話を切ると、隣の電話で話していた黒人女性が話しかけてきた。
年のころは20代後半ぐらい。
「もうすぐクリスマスなのに、私には食べるお金も何もないの。1ドルでいいから頂戴。」そんなことを言われたと思う。
今 同じことを言われたら「そう、大変ねぇ。」と言うぐらいで間違いなく何もあげないのだけど、あのころは本当に世間知らずで、純粋にかわいそうだと思った。
同情した私がどうしたかと言うと、ポケットから20ドル札を出して彼女に差し出した。
彼女は嬉しそうに受け取り、私に礼を言いながら握手を求め、立ち去って行った。

数日後、ファーストフード店で彼女と再会した。
友達を連れていた彼女は、私をとっても親切な人だと紹介した後、またお金をせびってきた。
私は何の躊躇もなく、10ドル札を差し出した。
私って本当に…バカ。

ハンバーガーをテイクアウトにして公園で食べていた。
するとホームレスの男性が近寄ってきたかと思うと、私から1mほど離れたところに腰掛けた。
小さな袋入りのケチャップ、ポテトにつけて食べたやつだったかな。
用済みのケチャップの袋をくれないかと彼が言う。
「いいよ。」と言うと、嬉しそうにその袋を口でチューチュー吸い出した。
飲み終えたコークのカップにはまだ氷が残っていた。
それもくれと言い、氷を美味しそうにガリガリと食べる。
私にどこから来たのかと尋ねるので日本だと答えると、5年ほど前に行ったことがあると彼が言った。
仕事で東京と名古屋に行ったんだそうだ。
海外出張をするようなビジネスマンが、5年後にはボロボロの格好で、破れた革靴から親指が飛び出し、他人の食べ残しを平気で口にするようになった。
何が原因だかわからないけど、ただただかわいそうで。

でもね、後で考えると、かわいそうじゃないんだよね。
色んなプレッシャーから逃れて、好きで一番ラクな生き方を選んだのかもしれない。
私がお金をあげた女性なんて一番スマートだよね。
私が一番、滑稽で、世間知らずで、一体何がやりたいんだか…恥ずかしくなった。

いつもありがとうございます。
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MotherLeaf*

コメント

  1. 第二の危険、お金を知らない人に恵むこと。
    まあ、日本に来た事あるアメリカ人は大半はGIだね。
    現代的にはNAVYって言うけど、横浜,横須賀、岩国
    沖縄にいたって言ったら大体兵隊だ。

  2. ::kspawsさん::
    GI・・・なんか懐かしい響きですね。
    彼は東京と名古屋って言ってたし、住んでいた訳じゃなさそうなので、たぶんビジネスマンだったと思いますよ。
    海外へ出張するようなビジネスマンがホームレスになっているという事実が、私には結構なショックでした。

  3. >私が一番、滑稽で、世間知らずで、一体何がやりたいんだか・・・・恥ずかしくなった。
    私も一緒だよ~
       、、、今でも滑稽、何がやりたいんだか・・・(-_-;)

  4. ::Rosaさん::
    ありがとう(;_;)
    私もずいぶんマシにはなったんだけど、今も滑稽だわ~。
    これでいいのかな?
    いいんだよね?