タイ人留学生Nちゃんが、ジャニーズのあるアイドルの大ファンだと言ったので、そのアイドルが出演するテレビ番組を録画して見せてあげたことが何度かあった。
しかしそれに関して、渡米前の娘が「そんなことをする必要はない」と、少々苛立った口調で私に言う。
その理由はすぐにわかった。
彼女は日本人なら誰でもよかった。
ジャニーズに限らず、アイドルに限らず、男性に限らず、売れていようといまいと、日本人であれば誰でもよかった。
「日本人好きです。誰でも」と本人が言ったので間違いない。
日本に来てから頻繁に色んなアーティストのコンサートやイベントへ出かけ、そのたびにTシャツやトレーナー、タオルやバッグなどのグッズを買ってきた。
コンサートのチケットが取れないときは、ネットで知り合った日本在住のタイ人に頼んでオークションで競り落とした。
もちろん1万や2万では済まない金額である。
特にお気に入りのアイドルが2日続けてコンサートをやるとなれば、2日ともチケットを取らないと気が済まない。
2日目のチケットしか取れなくても、初日にはグッズを買いに出かけた。
デビュー前のダンスユニットのイベントへ出かけ、次のイベント会場までメンバーに付いて行ったこともある。
なんだよ、節操がない子だな…と、私がNちゃんに抱いていた良いイメージがどんどん崩れていく。
Nちゃんは間違いなく、勉強のためではなく、コンサートやイベントのために日本に来たのだった。
大学進学はどうするのかと聞くと、
日本の大学に行きたい。
コンサートに行きやすいからヤフオクドームの近くの学校がいい。
東京なら東京ドームに近い大学に行きたいと言う。
もう、ここまでくると人生舐めてんのか！と怒りたくなる。
タイのご両親は、そんなことのために日本へ留学させたわけではないんだよ…なんて説教じみたことを言いそうになったが、そもそも私とは経済観念が違うのだから、そうとは言い切れない。
娘には何でも好きなことをさせてあげようと思っているのかもしれないのだから。
そう言えばNちゃんが日本に来たばかりの頃、2月までの滞在予定なのに、4月に東京で〇〇のコンサートがあるから、それまで滞在したいと私に言ってきた。
留学生なのにそんなことできるの？？と聞くと、大丈夫ですと答えたが、すぐには返事できないから考えておく…とだけ返事をしておいた。
私は、娘は厳しく育ててきたが、今考えるとNちゃんには割とゆるかった。
「我が子と同じように接してください」とエージェントには言われていたが、実際にそうするとギクシャクして、もしかするとNちゃんが耐えられなくなるのでは？という心配もあったし、かと言って、どれくらいが丁度よい厳しさなのかがわからなかった。
そんなこともあり、私は完全にNちゃんに舐められていた。
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