娘は入院して一週間も経たないうちにみるみる体力がなくなり、リハビリの時に階段を上がることさえできずに泣き崩れた。
精神面のケアのために用意されたカウンセラーに対して、意地悪な態度を取ったと娘が笑いながら話していたが、実際のところ彼女の心の状態はそんな態度を取りたくなるほど不安定になっていたのだと思う。
娘はいくつかの病気を併発していた。
中でももっとも心配されたのが、尿からたんぱくが出ていることだった。
それを聞いたとき、私は何が問題なのか意味がわからなかったが、調べてみると腎臓病の可能性があるらしかった。
早急に腎生検(腎臓の組織を取り出して検査)をやる必要があり、それを日本でやるのか、アメリカでやるのかの決断を迫られた。
私は日本でやってほしかったが、娘は断固拒否。
「車の免許なら、帰ってまた取ればいいやん」と私が言うと、
娘は泣きながら「それだけじゃない!やり残したことがありすぎる」と言った。
そう言われると何も言えない。
無理に帰国させるとストレスで逆に病気が悪化しそうで、アメリカで腎生検を受けることにした。
主治医から保険の説明があった。
なぜ医者がそんなことを説明できたのか未だにシステムがわからないが、現地で加入した保険の上限が20万ドル(1ドル110円換算で2,200万円)、そして最初に行った病院を含む検査などの費用と腎生検、そして1日あたり24万円を超える入院費などをプラスすると軽く1,000万円を超えるらしかった。
主治医から、すべて保険でカバーできるので安心するようにと言われホッとした。
自宅のパソコンでFacebookを開くと、娘のアカウントでログインされたままの状態だったので、おそろいのシャツを着た娘と白人の女の子の画像が目に飛び込んできた。
家族・友人たちへ
私たちが最後の瞬間まで一緒に過ごせるよう、この素敵な人に”気”を送ってください。
<中略>
私の日本の妹へ
どれだけの人たちがあなたを愛しているか知ってほしい…あなたは本当に素敵な人だから。
彼女はフランス人留学生で、娘の病院で”お泊り”までしてくれたくらい仲良しだった。(病院に家族以外の人が泊まれるのには驚いた)
他にも友達や学校の先生、隣に住んでいるお姉さんなど、たくさんの人がお見舞いにきてくれていた。
腎生検の日、娘がまだ集中治療室にいる間にホストマザーから電話があり、手術が無事に終わったことを知らせてくれた。
娘は入院から腎生検までの11日間で体重が10キロも落ち、象みたいに腫れ上がっていた足もほっそりとなって喜んだ。
ちょうど2週間の入院だった。
腎生検の結果は主治医が娘に伝えたらしく、娘から私に知らされた。
「私の腎臓って”レベル5“らしい」
レベル5とは、腎臓がかろうじて動いているという状態のことだった。
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